最高裁判所第三小法廷 昭和30(あ)1161 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人中村皎久の上告趣意第一点について。
論旨は事実誤認の主張に帰し適法な上告理由とならない。(論旨は、原審が、第
一審相被告人Aの、「四十余日の久しきに亘つて勾束を受け其肉体及精神上に極度
の苦痛に堪えずして止むを得ず取調官の問いに迎合した陳述並に証言(勾留中の訊
問)を採用して事実を認定した」ために、事実誤認を惹起したものであると主張す
る。しかし記録を調べてみると、右Aは昭和二八年五月一二日から同年六月六日保
釈となるまで勾留されていたが、原審が証拠として採用したのは、同人の保釈出所
後である同年六月一二日附及び同月二五日附の同人に対する検察官の供述調書であ
るから、所論の非難はあたらない。)
同第二点について。
所論は単なる訴訟法違反の主張であつて上告適法の理由とならない。のみならず、
被告人が右第一審相被告人Aから金一万円の供与を受けたという起訴事実と、被告
人が右Aから金八千円の供与を受けたという原判決の認定事実とは、同一事実であ
ること本件記録に徴し明白であるから、不告不理の原則に反するところはない。
同第三点について。
所論は原判決は事実認定を誤り法令に違反した違法な裁判であると前提して被告
人に罰金を科し且つ追徴を命じたのは憲法二九条に違反する旨主張するけれども、
原判決は所論のような違法な判決ではないこと既に説明した通りであるから、所論
違憲の主張はその前提を欠くものであつて採用することができない。また記録を調
べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
- 1 -
昭和三〇年一一月一五日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 河 村 又 介
裁判官 島 保
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
裁判官 垂 水 克 己
- 2 -